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講演「こどもを育むまちづくり~地域一丸となってこどもを育むためのしかけづくり」

2014年12月16日

ページ番号:159616

地域活動離れはなぜ起きる

 それでは、どうして人任せの人が増えているのだろうか、ということをもう少し突っ込んで考えて見ますと、あることが見えてきます。確かに、私も含めて普段生活しているときは、近所付き合いとか地域のつながりがなくても、何とか生活ができます。でも、別に災害にあわなくても、高齢にならなくても、生きているといろんなトラブルに巻き込まれたり問題を抱えたりします。そのときに「近所付き合いはいらないよ。」と言う方が、自分に降りかかってきた問題をどのように解決、処理をされているかということを突っ込んで考えますと、あることが見えてきます。それは何だろうかということですが、この近所づきあいに頼らない方はどうやって自分に降りかかってきた問題を解決しようとしているのか、制度とかお金を使って解決をしているのですね。この制度とお金、どういうことなのかもう少し具体的にお話させていただきたいと思います。

 まずわかりやすいのはお金だと思います。一番典型的なものの一つにお葬式というものがあります。自分の身内が亡くなったという大変な状況になるわけですね。なかなか身内だけで葬式を出すのは大変だろうということで、ご近所の方が分担をして葬儀を執り行ってきたというのが今までの仕組みだったんですね。お葬式は町会を中心とした近所で執り行ってもらえるんだ、というのが今までのやり方だったわけです。でも逆に、ご近所の方が亡くなったときは、この前お世話になったからということで、あるいはお互い様ということで、今度は自分がお手伝いに行くという関係で成り立ってきたわけですね。ところがこの人間関係というのは、なかなか厄介なものです。ですからこの厄介さを避けるために非常に便利な仕掛けがあります。何かといいますと、葬儀社というのがありまして、電話1本ですべてをやってくれるわけですね。市役所への届出、お通夜の準備、告別式、すべて葬儀社がやってくれます。これが典型的なお金で解決するということでございます。この厄介な人間関係を考えなくてもお金で問題を解決する典型的な話でございます。

 ちょっと話はそれますけれども、私の大学のある東大阪の近江堂という地域でも、月に1回の交流会をやっていまして、この前、お葬式の話になりました。地域でお一人暮らしの高齢者の方がお亡くなりになって、息子さん、娘さんはもう地域に住んでおられません。この息子さんは東京にお住まいなんですけれども、葬儀を東京でされるということになりました。東京でされると、こどもさんにとっては便利なのかもしれませんけれども、お母さんは地域の中で暮らしてきて、地域に知り合いが沢山いらっしゃいますので、地域の方も告別式に出たかったのですが、出られなくなったというような話でした。このお話をされた方は、とってもさびしい、悲しいとおっしゃっておられました。どうしてお母さんのことをもっと考えて、告別式を地元の東大阪でやってくださらないのだろうか、最近の人はすぐに自分の都合で考えてしまう方が多いとおっしゃっておられました。

 その後が、今日皆さんにお伝えしたいお話なんですが、その方は、「私が死ぬときは近所の人に迷惑をいっぱいかけて死んだるねん。」というお話をされました。これはどういうことかというと、それは悪い意味ではなくて、みんなで支えて自分の葬式を出してほしい、そしてこの自分の葬式を通じてまた地域の方がつながっていってほしいという思いでおっしゃっておられたんです。

 先ほども申しましたとおり、このお互い様というのはきれいな言葉ですけれども、その背景には人間関係がありますから、人間関係は厄介です。厄介だけれども、そこを重要視していかないといけない。けれども、今の世の中というのは厄介なことを抱え込まなくても、お金ということでさらっと解決をしてしまうという道具がさまざまあるということなんですね。

 さらに、お金で解決できない問題が出てきたときにはどうされるか、制度というものを使うわけですよね。この制度を使うというのはなかなか難しい言い方ですけれども、もっとわかりやすく言いますと、制度で問題を解決していただける方は誰かと言いますと、市役所、警察等々の方々です。ですので、何か困ったら市役所に電話をかけたら済む、何か事が起こったら警察に来てもらったらいいというような考え方が、この制度で問題を解決するということなんですね。

 これも冗談のような本当にあった話しですけれども、数年前の夏に台風がやってまいりました。夜にやってきまして大風が吹きました。朝は通過をしていましたので、穏やかになっていたのですが、この台風が通過した朝、あるお宅が雨戸を開けました。そうしますと自分の家の庭に隣の家の雨戸が落ちていたんですね。そしてその方はどうされたかというと9時まで待って市役所が開いた途端に電話を掛けまして、「隣の家の雨戸がうちの庭に落ちているので、市役所から何か言ってもらえませんか。」と言われました。市役所の方もこれはどうかと思ったので、「それはお宅の隣の問題なので、私が行くよりもお隣に来てもらったほうが早いんじゃないですか。」というようなお答えをされました。そうしますとその電話をされた方は、「うちは隣の家ともう十何年も喧嘩をしていて、このことでまたトラブルになったら厄介なことになるじゃないか、だから市役所に頼んでいるのに。」という話になるのですね。今日も市役所の職員さんが何人かお見えになっていますけれども、本当にいろんな電話が市役所にかかってまいります。それはもう当事者同士で解決してもらった方がいいのに、ということも市役所に何とかしてくださいというような電話がかかってくるわけですよね。これが制度による問題の解決ということになります。

 つまり、このいろんなやり方ができる世の中になっていることが、人任せの人を増やしているのではないかと思います。難しい話をしますと、このお金や制度で解決するというのは、私たちが暮らしている近代という世の中の特徴なんですね。

 近代というのが、まず一つ資本主義社会と言われます。資本主義というのはお金を回して世の中を元気にしていくというやり方をとるわけですけれども、今までお金に頼らなくても生活できていた部分をどうやってお金に変えていくのかというのが資本主義のやり方としてはあるわけですね。これを難しくは商品化と言いますけれども、これはいろんなものを商品にしていくわけですね。今日皆さんご飯はどこで食べられましたか。今まではご飯は自宅でつくっていましたが、今は外食もあり、弁当も買って来られるということで、お金で価値を置き換えていくということをやっているわけです。それから年末になりますと、大掃除が大嫌いだという方は最近は電話1本でプロが来てやってくださるという世の中になりました。ですので、お金を持っている方はお金で解決ができます。そこを狙っていくのが商品化ということです。ということで、この資本主義社会が進めば進むほど、人任せの人が増えていくということになります。

 それからもう一つ、法律で世の中の秩序を保っていく、これを法治といいますけれどもこれも近代の特徴なんですね。これをもう少し違う面で言いますと、火事になれば、今は消防署が来てくれることがほとんどですけれども、古い村から発達している町では消防団というのもありますね。消防団というのは地域の方が、火事のときにボランティアで駆けつけて火を消すと言う役割ですね。ですので、かつては村のこと町のことは自分たちでやってきたわけですけれども、それを市役所の仕事にしていったというのも近代の世の中なんですね。確かに先ほどから言っていますように自分が動かないで問題を解決できるというのは、私も含めてとっても楽です。人間と言うのは下手すると楽な方に動きますから、だから世の中が楽な方で済ませられるようになればなるほど、みんな楽な方に進んでしまうというのが今の世の中です。けれどもお金でも制度でも解決できない問題がどんどん世の中に増えているというこのときにどうするか、というのが今日の話題の一つでもございます。本当に大変な時代に入ってきたと思います。でもここで愚痴を言っていても仕方がないのでどうしたらいいかというのがこれからの話でございます。

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